店舗内装デザインの実践プロセスについて2025.10.11
店舗内装デザインとは何か
店舗内装デザインとは、商業施設や店舗の内部空間を、ブランド価
内装デザインの目的は、次の3点に集約されます。
- ブランドイメージの確立
- 購買・来店行動の促進
- 快適で安全な環境づくり
つまり、デザインとは“美しさ”の追求だけではなく、“売れる仕組み”の構築でもあるのです。
第1章:店舗内装デザインの基本構成要素
■1. コンセプト設計
店舗デザインの出発点は、コンセプトワークです。
これは「誰に」「何を」「どのように」伝えるかを空間で表現する作業です。
- ターゲット分析:年齢層・性別・所得・ライフスタイル・価値観などを調査
- ブランドポジショニング:高級・カジュアル・ナチュラル・モダンなどの軸を設定
- ビジョン・ストーリー化:ブランド理念を空間体験に変換
たとえば、カフェなら「日常の中の非日常」、美容室なら「自分を磨く特別な時間」など、感情に訴える物語性が重視されます。
■2. 空間レイアウト(ゾーニング)
ゾーニングとは、店舗内のスペースを機能別に分ける作業です。
販売効率と動線計画を最適化することが主な目的です。
- エントランスゾーン:第一印象を形成する。ブランドの世界観を象徴
- メインゾーン:売上の中心。顧客の回遊性を高める配置計画が重要
- サービスゾーン:レジ・待合・フィッティングルームなどの機能空間
- バックヤード:在庫・スタッフスペースなど効率性重視の設計
ゾーニングの巧拙は、顧客滞在時間と購買単価に大きく影響します。
■3. カラーデザイン
色彩は感情をダイレクトに刺激します。
店舗内装におけるカラーデザインは、心理学とマーケティングの融合です。
- 赤系:刺激・食欲・行動促進(飲食店に多い)
- 青系:冷静・信頼・清潔感(クリニック・理美容など)
- 緑系:安心・癒し・自然(カフェ・オーガニック系)
- 黒・白:高級感・モダン・洗練(アパレル・高級サロンなど)
また、照明との組み合わせで、色の印象は大きく変化します。
■4. 照明デザイン
照明は「見せたいものを際立たせる」ためのツールです。
単に明るさを確保するのではなく、演出と機能性の両立が求められます。
- ベース照明:全体の明るさを確保
- アクセント照明:商品や特定エリアを強調
- タスク照明:作業・接客などに必要な光量を確保
- 間接照明:雰囲気演出、奥行き感の創出
LEDの普及により、照明演出の自由度は飛躍的に向上しています。
特に最近では「照明温度によるゾーン演出」「光の動的制御」なども注目されています。
■5. 素材と質感
内装材の選定は、コスト・耐久性・メンテナンス性・意匠性を考慮して行います。
代表的な素材には以下があります。
- 床材:タイル、フローリング、塩ビシート、モルタル
- 壁材:クロス、塗装、木パネル、石材、左官仕上げ
- 天井材:化粧ボード、吸音材、スチールグリッドなど
- 什器素材:木・鉄・ガラス・アクリル・石・真鍮など
素材の組み合わせは「ブランドの質感」を左右します。
たとえば「無印良品」では天然木と白壁によるナチュラルさ、「スターバックス」では木質と黒鉄の組み合わせによる“温かい都会的空間”が代表例です。
第2章:店舗デザインのプロセス
■1. 企画・ヒアリング
最初のステップでは、クライアント(店舗オーナー)の要望を詳細にヒアリングします。
- 業態・商品・ターゲット層
- 売上目標と坪単価
- 競合店舗の分析
- コンセプト・ブランド理念
- 開店スケジュール・予算
この段階での情報整理が、後の設計精度を左右します。
■2. プランニング(基本計画)
ヒアリング内容をもとに、店舗の空間構成・動線計画を立案します。
主な成果物は次の通りです。
- 平面図(レイアウトプラン)
- ゾーニング図
- コンセプトボード
- 参考イメージパース
ここでは、**「どのように空間を使うか」**を明確にします。
■3. デザイン設計
基本計画が承認されると、詳細なデザイン設計に進みます。
- 平面図・立面図・断面図・展開図の作成
- 什器・照明・素材・色彩の詳細設計
- 3DパースやVRによるプレゼンテーション
この段階で、空間の見た目と雰囲気がほぼ確定します。
デザイナーは機能性・安全性・施工性を同時に考慮しなければなりません。
■4. 見積・コスト調整
設計内容に基づき、施工会社が見積を提出します。
コストは以下の要素で構成されます。
- 内装工事費(床・壁・天井)
- 設備工事費(電気・給排水・空調など)
- 什器・家具費
- サイン・照明・装飾費
- デザイン設計料・監理費
予算オーバーの際は、「VE(Value Engineering:価値工学)」でコスト削減策を検討します。
■5. 施工・監理
施工段階では、図面に基づいて実際の工事が行われます。
デザイナーは現場監理を行い、設計通りの仕上がりを確認します。
- 施工図確認
- 材料・仕上げチェック
- 照明・什器の位置調整
- 完成検査・是正対応
デザインと施工の連携が悪いと、イメージの乖離や工期遅延が発生します。
したがって、「設計監理」は非常に重要なプロセスです。
■6. 引き渡し・オープン
施工が完了すると、最終検査を経て引き渡しとなります。
その後、什器・商品陳列・スタッフ導線の確認を行い、オープンを迎えます。
オープン後も、照明の調整や動線の微修正など、運用段階でのチュ
第3章:業種別店舗デザインの特徴
■1. 飲食店
飲食店では「滞在時間」「居心地」「食欲」「回転率」がデザインの鍵です。
- ファストフード:明るい照明・高彩度カラー・短時間滞在設計
- カフェ:間接照明・自然素材・ゆったりとしたレイアウト
- 居酒屋・バー:照度を落とし、プライベート感を演出
厨房との動線、排煙・換気設備もデザインと密接に関係します。
■2. アパレルショップ
アパレルでは、商品が主役です。内装はそれを引き立てる背景であり、演出装置です。
- シーズンごとに変化できる柔軟な什器構成
- 鏡や照明による試着効果の向上
- 素材・色調でブランド個性を表現
ZARAやUNIQLOなどは「システマティックで大量陳列型」、一方でセレクトショップは「ギャラリー型展示」で差別化を図ります。
■3. 美容室・サロン
美容室では、「リラックス」「信頼」「清潔感」が重視されます。
- 座席間の距離感・プライバシー配慮
- 鏡面と照明による美肌効果
- 水回りと電気系統の安全設計
また、リピーター獲得のため、待合スペースの快適性や香り演出も重視されます。
■4. クリニック・エステ
「安心・衛生・癒し」を感じさせるデザインが中心です。
- 白やベージュを基調とした清潔感
- 温かみある間接照明
- 匂いや音の管理
- バリアフリー対応
心理的ハードルを下げるために、“病院らしさを消す”内装が近年のトレンドです。
■5. 物販店・ショールーム
「視覚的訴求」「体験型陳列」「回遊性」がポイントです。
- ストーリーテリング型ディスプレイ
- 照明演出で商品を際立たせる
- 動線にリズムを持たせる空間構成
特に家電・家具ショールームでは「体験+空間提案」が重要です。
第4章:最新トレンドとデザイン戦略
■1. サステナブルデザイン
SDGsの潮流を受け、環境配慮型デザインが急速に普及しています。
- リサイクル素材の使用
- 省エネ照明・自然光利用
- ローカルマテリアル活用
- 長寿命設計
また、環境負荷だけでなく「地域文化との共存」も新たな価値軸です。
■2. デジタル×空間デザイン
デジタルサイネージ・プロジェクションマッピング・インタラクティブ演出など、テクノロジーを融合した空間が増えています。
- 動く壁面ディスプレイ
- スマート照明制御
- QRコードによる情報拡張
- メタバース連動店舗
顧客のSNS投稿を促す「フォトスポット設計」も、現代の販売戦略に欠かせません。
■3. 体験型デザイン(エクスペリエンス重視)
物を売るだけでなく、「体験」を提供するデザインが主流です。
例:
- コーヒーの焙煎を見せるカフェ
- 自分でカスタマイズできる店舗
- 試飲・試食・体験スペースの設置
これにより、顧客とのエンゲージメントが高まり、リピーター化につながります。
■4. ミニマリズムと空間心理
「引き算のデザイン」によって、ブランドの純度を高める戦略も注目されています。
- 余白の美学
- 機能美と象徴性
- 北欧デザインのような温かいシンプルさ
視覚ノイズを減らすことで、顧客の注意を商品に集中させます。
第5章:コストとスケジュール管理
■1. コスト構成の目安
項目割合の目安内容内装工事費約40〜50%床・壁・天井・仕上げ設備工事費約20〜30%給排水・空調・電気什器・家具費約10〜20%陳列棚・テーブル等デザイン設計料約5〜10%図面・監理・パース等サイン・装飾費約5%前後看板・装飾小物など
小規模店舗では、1㎡あたり15〜25万円程度が相場です(業態により異なる)。
■2. スケジュール例
フェーズ期間内容企画・ヒアリング約1〜2週間方向性・要望整理基本設計約2〜4週間レイアウト案・3D提案実施設計・見積調整約2〜3週間詳細設計・コスト確定施工約3〜6週間現場工事・検査オープン準備約1週間什器搬入・調整
全体で2〜3ヶ月程度が一般的です。
第6章:法規・安全基準
店舗デザインでは、建築基準法・消防法・障害者差別解消法などに準拠する必要があります。
- 避難経路・非常口の確保
- 防火区画・内装制限
- 照度・換気・衛生基準
- バリアフリー対応
違反すると営業許可が下りないため、設計初期から法令を意識することが重要です。
第7章:成功する店舗デザインの条件
- コンセプトが明確であること
- 顧客動線がスムーズであること
- 照明・音・香りの演出が一貫していること
- 素材・色・形がブランドイメージと一致していること
- デザインと運営が調和していること
デザインは単体で完結しません。運営・接客・商品構成と一体となって効果を発揮します。
第8章:実例研究
- 木・石など自然素材を活用し、「第三の場所(Third Place)」を体現。
- 照明と家具配置で心理的距離を設計。
- 白とガラスによる無機質な空間。
- 商品が主役となる「背景としてのデザイン」。
- ナチュラル素材と余白の空間。
- “整える”というブランド哲学を空間で表現。
第9章:まとめ
店舗内装デザインとは、
単なる“見た目”ではなく、“売上・ブランド・顧客体験”を統合する戦略的行為です。
成功の鍵は以下にあります。
- 明確なコンセプト
- 顧客心理に基づく動線設計
- 光・素材・色の総合演出
- 法規・コストのバランス管理
- ブランド哲学を空間化するストーリー性
デザインとは、経営そのものを可視化する手段です。
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