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店舗内装工事の企画から施工までについて2025.10.10

第1章 店舗内装工事の基本概要

1-1 店舗内装工事とは

店舗内装工事とは、飲食店・美容室・物販店・オフィス・クリニックなどの商業施設において、空間の設計・内装仕上げ・設備工事を通じて、営業可能な状態に整えることを指します。
単なる装飾やデザインではなく、建築・電気・給排水・空調・防火・音響・照明など、多岐にわたる専門分野の技術を統合して行う総合工事です。

この工事は、店舗の「第一印象」や「売上」に直結するため、デザイン性だけでなく、動線計画、機能性、安全性、法規制への適合性が強く求められます。


第2章 店舗内装工事の種類と特徴

2-1 スケルトン工事

スケルトン工事とは、内装・設備をすべて撤去し、構造体(柱・梁・床・天井)だけの状態にする工事です。
新規開業時やリノベーションの際に、ゼロベースで空間を作り替える場合に行われます。
この状態から内装を作り上げるため、設計自由度は高いですが、費用と工期は長くなります。

2-2 居抜き工事

居抜き工事とは、前テナントが使用していた内装や設備を活かして工事を行う方法です。
コストを抑え、短期間で開業できるのが大きなメリットですが、既存設備の老朽化や仕様制限がリスクとなります。

2-3 部分改修工事

営業中の店舗で、特定のエリア(厨房・トイレ・レジ周り・照明など)を改修する工事です。
営業に支障をきたさないよう、夜間や休日に作業を分けて行うケースもあります。

2-4 リニューアル・リノベーション工事

開業から数年経過した店舗の印象刷新、ブランド再構築、機能改善を目的とした工事です。
単なる補修ではなく、集客・ブランディング・省エネなどの観点を重視します。


第3章 店舗内装工事の工程

店舗内装工事は、以下の7つのステップで進行します。

3-1 企画・コンセプト設計

まず、店舗の目的と方向性を明確化します。

  • 店舗の業態(飲食・物販・サービスなど)
  • ターゲット層(年齢・性別・ライフスタイル)
  • ブランドイメージ(高級・カジュアル・ナチュラルなど)
  • 立地特性(駅前・住宅街・商業施設内など)

コンセプトが定まることで、内装のデザインや素材、照明演出、レイアウト方針などが決まります。

3-2 現地調査・採寸

施工前に現場の構造・寸法・設備位置を正確に把握するための工程です。
既存配管や梁・柱位置、電気容量、換気経路、防災設備などを詳細に確認します。

3-3 基本設計・実施設計

設計者が平面図・展開図・照明計画図・配線図などを作成します。
この段階で、デザイン性・機能性・安全性・法規適合性のバランスを取ることが重要です。
厨房の排気経路、トイレの配置、カウンターの高さなど、細部の調整も行われます。

3-4 見積り・契約

設計図面をもとに、施工会社が見積書を作成します。
見積もりには、以下の項目が含まれます。

  • 造作工事費(壁・床・天井など)
  • 設備工事費(電気・水道・空調など)
  • 材料費・人工費
  • 諸経費(現場管理費、運搬費、廃棄物処理費など)

発注者は複数社の見積を比較検討し、金額・工期・施工品質・アフターサポートなどの条件を確認します。

3-5 施工準備

契約後、着工に向けた準備を行います。

  • 工程表の作成
  • 資材・機器の発注
  • 管理組合やビルオーナーへの申請
  • 近隣挨拶・安全対策

3-6 施工

実際の工事では、以下のような工程が一般的です。

  1. 仮設・養生工事:周囲の保護と安全確保
  2. 軽鉄・下地工事:壁・天井の骨組みを作成
  3. 電気・給排水・空調設備工事:見えない部分の配線・配管を設置
  4. 内装仕上げ工事:床材・壁紙・塗装・造作家具の設置
  5. 什器・サイン工事:カウンター・棚・看板などを設置
  6. 清掃・検査:仕上がりの確認・微調整

3-7 引き渡し・アフターフォロー

完成後、施工会社と発注者が立ち会いで最終検査を行います。
問題がなければ引き渡し、設備の使い方説明・保証書の交付・アフターサービスの説明を受けます。


第4章 店舗内装工事の費用相場

費用は店舗の業態・規模・立地・デザイン性などによって大きく異なります。業種坪単価の目安備考飲食店(一般)40〜80万円/坪厨房・給排水設備が高コストカフェ・バー35〜60万円/坪デザイン性重視・照明費高め物販店25〜50万円/坪シンプルな造作中心美容室50〜100万円/坪給排水・電気・鏡面設備多数クリニック60〜120万円/坪医療法・衛生基準への対応が必要オフィス・ショールーム20〜40万円/坪設備負荷が低く比較的安価

さらに以下の費用も考慮が必要です。

  • 設計料(総工費の5〜15%)
  • 看板・サイン制作費
  • 家具・備品(FF&E)
  • 消防・保健所申請費用
  • 原状回復費(退去時)

第5章 店舗内装デザインの要素

5-1 デザインコンセプト

店舗のコンセプトが空間デザインの核となります。
「和モダン」「ナチュラル」「インダストリアル」「ラグジュアリー」など、業態とターゲット層に合致したデザインテーマを設定します。

5-2 動線計画

来店客・スタッフ双方の動線を最適化することで、効率的で快適な空間を実現します。
飲食店では、ホールと厨房の連携動線が特に重要です。

5-3 照明設計

照明は雰囲気づくりの重要要素です。

  • ベース照明:全体の明るさを確保
  • アクセント照明:商品や空間の魅力を強調
  • タスク照明:作業に必要な光量を確保

LED照明を中心に、省エネ性・演色性・調光制御も考慮されます。

5-4 素材と質感

木、金属、石、ガラス、タイル、布など、素材の組み合わせで印象が変わります。
近年では、サステナブル素材(リサイクル木材・非VOC塗料など)も注目されています。

5-5 サイン・グラフィック

ロゴや看板、壁面グラフィックはブランドの世界観を伝える要素です。
視認性・耐久性・法規制(屋外広告条例)への配慮も必要です。


第6章 法規制と申請手続き

店舗内装工事では、各種の法令に基づく申請・確認が必要です。

6-1 建築基準法

建築物の構造・用途・防火性能を定める法律。
特に重要なのは用途変更内装制限です。
防火地域・準防火地域内では、不燃材料の使用義務があります。

6-2 消防法

飲食店や物販店では、**防火設備(スプリンクラー・誘導灯・非常照明)**の設置義務があります。
内装工事前に消防署への「工事計画届出」や「防火対象物使用開始届出」が必要です。

6-3 保健所(飲食店・美容室など)

飲食店や理美容室を開業する場合、営業許可申請が義務です。
厨房・手洗い・換気・給排水・仕切りの設計が基準を満たす必要があります。

6-4 電気・ガス・上下水道の届出

新規に配線・配管を行う場合、各事業者への工事申請が必要です。

6-5 テナントビルの管理規約

ビルや商業施設内のテナント工事では、管理会社による事前承認が必須です。
工事時間、騒音規制、搬入経路などが細かく定められています。


第7章 施工会社選びのポイント

店舗内装工事の成功は、施工会社選びに大きく左右されます。

7-1 実績と専門性

業態ごとの施工実績が豊富な会社を選ぶことが重要です。
例えば、飲食店専門の施工会社は、厨房排気や保健所基準に熟知しています。

7-2 設計施工一貫体制

設計と施工を一社で行う「設計施工一貫方式」では、コストの透明化・工期短縮・品質一貫性が期待できます。

7-3 アフターメンテナンス

工事完了後のトラブル対応や定期点検体制を確認しましょう。
特に電気・空調・排水などの不具合対応が迅速な会社が理想です。

7-4 見積書の明瞭さ

費用項目が詳細に記載されている見積書を提示する会社は信頼性が高いです。
「一式」表記が多い見積書は、後々トラブルの原因になる場合があります。


第8章 工期とスケジュール管理

一般的な工期の目安は以下の通りです。店舗規模工期の目安小規模(〜10坪)約2〜4週間中規模(10〜30坪)約1〜2ヶ月大規模(30坪〜)約2〜4ヶ月

ただし、設計期間や申請期間も含めると、全体で3〜6ヶ月を見込むのが現実的です。
開業日から逆算し、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。


第9章 店舗内装工事の最新トレンド

9-1 サステナブルデザイン

環境配慮型素材(再生木材、低VOC塗料、リサイクル金属)の採用が増加しています。
また、省エネ設備や自然光利用設計も注目されています。

9-2 デジタル演出

デジタルサイネージやプロジェクションマッピングを活用した体験型店舗が増えています。
特にアパレル・飲食業ではブランド体験の一部として演出が重視されます。

9-3 モジュール設計・可変空間

将来的な業態変更を想定し、内装をモジュール化・分解可能に設計する流れも強まっています。

9-4 Z世代対応デザイン

SNS映えを意識した「フォトスポット」「体験型ディスプレイ」などが若年層向け店舗の鍵となります。


第10章 開業後のメンテナンスと改修

内装工事は完成して終わりではありません。
営業開始後も、以下の点検・修繕を定期的に行うことが重要です。

  • 照明・空調・換気設備の清掃・点検
  • 水漏れ・配線トラブルの早期発見
  • 壁紙や床材の補修
  • 消防設備の年次点検

また、5年〜10年を目安に部分的なリニューアルを行うことで、店舗の鮮度を維持できます。


第11章 トラブル事例と回避策

トラブル1:工期遅延

原因:申請の遅れ、資材納期遅延、仕様変更など
対策:余裕を持った工程管理と、仕様確定の早期化。

トラブル2:追加費用発生

原因:見積範囲外の工事、設計変更、予期せぬ設備不良
対策:事前に追加工事条件を契約書で明確化しておく。

トラブル3:近隣クレーム

原因:騒音・振動・粉塵
対策:着工前の近隣挨拶、工事時間の配慮、養生徹底。


第12章 まとめ:成功する店舗内装工事のポイント

  1. 明確なコンセプト設計
    ┗ デザインは目的を表現する手段。ブランディングと連動させる。
  2. 法規制・申請手続きの理解
    ┗ 消防・保健所・建築基準法に適合することが前提。
  3. 信頼できる施工パートナーの選定
    ┗ 実績・見積明瞭・対応力・アフター体制を重視。
  4. スケジュールとコスト管理の徹底
    ┗ 開業日から逆算し、余裕ある工程を設定。
  5. 長期視点での維持管理
    ┗ 開業後のメンテナンス・改修計画まで見据える。

終章 店舗内装工事の本質

店舗内装工事は「空間を作る」行為ではなく、「ブランド体験を構築する」プロセスです。
人々がその場所で何を感じ、どう行動するか——それをデザインし、形にすることが内装工事の真の目的です。
見た目の美しさにとどまらず、機能・心理・経済性・環境配慮が融合した空間こそ、現代の商業建築が求める理想像といえます。

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